「賃貸物件で壁紙に傷をつけてしまった…」
「退去時に一面だけクロスの張り替えが必要と言われたけど、費用は高いの?」
こんな不安を感じた経験はありませんか?
実は、原状回復におけるクロス(壁紙)の張り替え費用は、傷や汚れの程度だけでなく、クロスの種類や地域相場、入居年数による“減価償却”など、さまざまな要素で決まります。
この記事では、クロス一面分の原状回復費用の目安や負担ルール、費用が高くなるケース、トラブルを避けるポイントまで、初めての方にも分かりやすく解説します。
Contents
クロスの原状回復は一面でも費用がかかる?
まず大前提として、賃貸物件のクロスが破損・汚損した場合、「原状回復」の対象となり、借主が修繕費を負担することがあります。
ただし、すべての場合において借主が支払うわけではありません。
クロスの費用負担は原因によって異なる
◆経年劣化・通常損耗 → 貸主負担
自然な色あせ、日焼け、家具跡などは生活上避けられないため、貸主(大家さん)の負担となります。
◆故意・過失による汚れや傷 → 借主負担
タバコのヤニ汚れ、ペットによる引っかき、飲み物によるシミ、シール跡、落書きなどが該当します。
◆判断が難しい場合 → 話し合いや契約書の記載が優先される
「善管注意義務違反」に当たると判断された場合、借主負担になる可能性が高まります。
クロスの張り替え対象が“部屋全体”なのか“破損した一面のみ”なのかでも費用に差が出るため、どこまでが対象になるのか事前確認が重要です。
クロス一面の原状回復にかかる費用相場
次に、実際にどれくらいの費用がかかるのか、具体的な金額の目安を見ていきましょう。
クロスの張り替え費用は主に「㎡単価×張り替え面積×減価償却率」で計算されます。
【クロス張り替えの㎡単価】
クロスのグレード | 単価(1㎡あたり) | 特徴 |
---|---|---|
量産品クロス | 約800〜1,300円 | 賃貸で多く使われるシンプルなクロス |
ハイグレードクロス | 約950〜1,800円 | 防カビ・防汚・消臭などの機能付き |
一面張り替えの概算
6畳間の一面(約8㎡)を張り替えると仮定すると…
◆量産品使用: 8㎡ × 1,000円 = 8,000円前後
◆ハイグレード使用: 8㎡ × 1,300円 = 10,400円前後
※これに加えて施工費(約1万〜2万円)がかかる場合もあります。
下地(石膏ボードなど)まで損傷していた場合、別途補修費(1か所あたり30,000円前後)が追加されることがあります。
クロスの費用に影響する“減価償却”とは?
退去時のクロス費用は、実は入居年数に応じて“減価償却”という計算がされます。
これは、クロスの耐用年数を超えていれば、それ以上の費用請求はできないという考え方です。
クロスの耐用年数
クロス(壁紙)の耐用年数は一般的に6年とされています。
6年を超えていれば、原則として借主の負担は0円になります。
入居年数による費用の一例
入居年数 | 借主の負担割合 | 解説 |
---|---|---|
1年未満 | 約80% | クロスがまだ新しいため負担も大きい |
3年程度 | 約50% | 経年による価値減を考慮して減額される |
6年以上 | 0% | 耐用年数を超えており負担なし |
これはガイドラインに基づいた計算であり、実際には契約書や貸主との話し合いで決まることもあります。
壁紙の破損・傷の程度が費用に与える影響
クロス一面といっても、傷の程度によって修繕方法と費用は大きく異なります。
軽度な傷・汚れの場合
◆タバコのヤニ汚れ
◆一部分のシミ・軽い引っかき傷
◆結露による薄いカビ汚れ
通常のクロス張り替え(量産品)で対応可能なため、費用は比較的安く済みます。
重度な破損・下地の損傷がある場合
◆壁に穴が空いている
◆石膏ボードまで破れている
◆カビが深く根を張っている
下地補修や全面張り替え、脱臭処理などが必要となり、1か所あたり3万円以上かかる場合もあります。
クロスを張り替えるだけでなく、下地補修費が含まれると、費用が倍近くになることもあるため要注意です。
トラブルを防ぐために知っておきたい3つの対策
原状回復の費用トラブルは少なくありません。
特にクロスの汚れや傷は生活の中で起きやすいため、以下の対策をしておくことで、トラブルを回避できます。
【1】入居時と退去時に写真を撮っておく
◆入居時の壁の状態を写真で記録しておくことで、「もともとあった傷かどうか」の証明に使えます。
◆退去時の状態も撮影し、貸主・管理会社に提出することでトラブルを防ぎやすくなります。
【2】契約書の「原状回復」の項目を確認する
◆原状回復の負担ルールが詳細に記載されていることがあるため、退去前に確認を。
◆ガイドラインと異なる内容でも「契約優先」とされることがあるため要注意。
【3】過剰請求には“ガイドライン”を提示して冷静に対応
◆国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では明確な負担区分と減価償却が示されています。
◆明細が不明な高額請求が来た場合は、ガイドラインを根拠に明確な説明を求めましょう。
まとめ
クロス一面の原状回復費用は、破損の原因や範囲、素材のグレード、入居年数などさまざまな要素で決まります。
きちんとした知識を持っていれば、退去時の不安やトラブルをぐっと減らすことができます。
この記事のまとめ
◆クロス張り替え費用は1㎡あたり約800〜1,500円が相場
◆一面(約8㎡)の張り替え費用は6,000〜12,000円+施工費が目安
◆借主負担は「故意・過失による汚れ・破損」のみ
◆減価償却で6年以上住んでいれば借主負担は0円が原則
◆写真記録・契約内容の確認・ガイドライン活用でトラブル防止
「思わぬ高額請求で損をした…」とならないためにも、まずは正しい知識と冷静な対応を心がけましょう。