貸物件に住んでいて、うっかり壁紙(クロス)を破いてしまった、汚してしまったという経験はありませんか?
そんなときに気になるのが、「どこまで直さなきゃいけないのか」「費用は全部自分が負担するのか」という点です。
実は、原則としてクロスは破損した“部分のみ”の張り替えで済みますが、場合によっては“壁一面”の張り替えを求められることもあります。
この記事では、クロスの原状回復における「一面張り替え」のルールと例外、借主・貸主の費用負担の分かれ方、実際の費用相場について、わかりやすく解説します。
Contents
クロス破損時は一面すべての張り替えが必要?
まず大前提として、賃貸物件でクロスが破れたり、汚れたりした場合、原状回復の考え方に基づき、基本的には“破損部分のみの張り替え”で対応するのが原則です。
例外として“一面分の張り替え”が認められるケースがある
以下のような事情がある場合は、破損が一部であっても、一面すべてのクロス張り替えが妥当とされ、借主がその費用を負担することになります。
◆破損部分と周囲のクロスの色が大きく異なる場合
経年劣化で他のクロスが黄ばんでいると、張り替えた部分だけが浮いて見える
◆模様合わせや商品価値維持の観点から一体施工が求められる場合
柄入りクロスの場合、継ぎ目が不自然だと美観が損なわれ、部屋の価値が下がる可能性がある
◆破損箇所が目立つ位置にあり、部分補修での仕上がりが著しく劣る場合
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも、「美観・商品価値の維持のためにやむを得ない場合に限って、全体補修が認められる」と明記されています。
クロス一面張り替えにおける費用負担のルール
「じゃあ、一面すべてを張り替えることになったら費用は誰が負担するのか?」という点が最も気になるところです。
借主が費用を負担するのは“破損原因”が自分にある場合
以下のような“故意・過失”によってクロスが損傷した場合、その範囲に対してのみ借主が負担します。
◆子どもが壁に落書きした
◆ペットが引っかいて破ってしまった
◆飲み物をこぼしてクロスが染みた
◆タバコによるヤニ汚れや臭いが強く残った
ただし、クロス一面分を張り替えることになったとしても、「破損によって必要となった部分のみの費用」が借主の負担です。
他の部分については、貸主側の負担となります。
貸主が費用を負担するのは“経年劣化”や“通常損耗”による場合
以下のような自然な変化は借主の責任とはされません。
◆日焼けや経年による黄ばみ
◆家具の跡や摩擦による軽微なスレ
◆クロスの耐用年数(6年)を超えていた場合
つまり、たとえ一面張り替えを行ったとしても、そのうちの「経年劣化分」は借主に請求できません。
過失分のみを按分して負担します。
クロスの張り替え費用相場はいくら?
クロス張り替え費用は、クロスのグレードや広さによって変動します。
ここでは一面の張り替えにかかる費用を、目安としてご紹介します。
クロス張り替えの㎡単価
クロスの種類 | 単価(1㎡あたり) | 特徴 |
---|---|---|
量産品クロス | 約800〜1,100円 | 賃貸でよく使われるスタンダードなタイプ |
ハイグレードクロス | 約950〜1,500円 | 汚れ防止・消臭・防カビなど機能性が高い |
一面張り替えの費用目安(6畳部屋の一面・約8㎡想定)
◆量産クロス:6,400〜8,800円
◆ハイグレードクロス:7,600〜12,000円
※これに加えて施工費(職人の手間賃)が10,000〜20,000円前後かかる場合があります。
請求された場合は「㎡単価」「面積」「施工費用」が明細に記載されているか確認しましょう。不明な点があれば遠慮なく貸主や管理会社に確認を。
「部屋全体の張り替え」と「一面張り替え」はどう違う?
場合によっては、クロス一面だけでなく「部屋全体を張り替える」と言われるケースもありますが、そのような場合の費用負担はどうなるのでしょうか?
部屋全体を張り替える場合のルール
◆借主の過失による破損箇所以外(=残りの壁面)は貸主が費用を負担
◆借主が負担するのは“原因となった一面分”のみ
◆見た目のバランスや商品価値維持の観点で全体張り替えが必要と判断されることもある
判断のポイント
◆クロスの模様や色に個性が強い場合、部分張り替えだと違和感が残る
◆他の面がすでにかなり古く、部分補修では部屋全体の印象が損なわれる
◆管理会社や貸主の判断だけで全面請求された場合は、ガイドラインの提示を求めるとよい
借主が負担するのは“部屋全体”ではなく、“自らが破損した一面”のみに限られます。請求が妥当かどうかを見極めるために、施工内容と明細の確認が大切です。
原状回復トラブルを防ぐには?
クロスの破損が発覚したとき、慌てて対応すると逆に費用が増えてしまうこともあります。以下の対応を心がけましょう。
【1】破損があったらすぐに報告する
無断で修繕や補修を行うと、逆に契約違反になることがあります。
管理会社・大家に報告し、指示を仰ぐのがベストです。
【2】退去前に破損の状態を記録しておく
写真で撮影しておくと、後の負担割合の判断に役立ちます。
補修前の状態がわかることで、経年劣化か過失かの説明がしやすくなります。
【3】ガイドラインを根拠に冷静に話し合う
過度な請求があった場合、「原状回復をめぐるガイドライン」に基づいて交渉しましょう。
消費生活センターや不動産トラブル相談機関に相談するのも有効です。
まとめ
クロスが破損したとき、「部分補修で済むのか」「一面の張り替えになるのか」「費用はどこまでが自己負担なのか」は、見た目のバランスや原状回復の原則に基づいて判断されます。
この記事のまとめ
◆クロスは原則「破損部分のみ」の補修が基本
◆ただし、美観・商品価値の維持のために一面張り替えが認められることもある
◆借主の負担はあくまで“過失によって破損した部分”のみ
◆経年劣化・通常損耗の分は貸主負担が原則
◆費用の透明性を保つために、見積書・明細の確認が重要
一面だけの張り替えでも、ケースによっては予想以上の費用になることがあります。だからこそ、事前の知識と丁寧なコミュニケーションが、無駄な出費を防ぐ最大のカギとなります。